【線形代数】ベクトルと行列の基本まとめ

基本を思い出すための参照用備忘録

ベクトルの内積とノルム

\(\mathbb{C}^n\)の元\(\boldsymbol{x} , ~\boldsymbol{y}\)に対して内積(エルミート積)は

\[(\boldsymbol{x} \mid \boldsymbol{y}) = \boldsymbol{x}^{\mathrm{T}} \bar{\boldsymbol{y}}\]

ノルムは

\[\| \boldsymbol{x} \| = \sqrt{(\boldsymbol{x} \mid \boldsymbol{y})} = \sqrt{\boldsymbol{x}^{\mathrm{T}} \bar{\boldsymbol{y}}}\]

内積の定義は次の性質を満たすことです。

  • \((\boldsymbol{x} \mid \boldsymbol{x}) \geq 0 \)(正値性)(等号は\(\boldsymbol{x} = \boldsymbol{0}\)のときだけ)
  • \((\boldsymbol{x} \mid \boldsymbol{y}) = (\boldsymbol{y} \mid \boldsymbol{x})\)
  • \( (\boldsymbol{x} + \boldsymbol{y} \mid \boldsymbol{z}) = (\boldsymbol{x} \mid \boldsymbol{z}) + (\boldsymbol{y} \mid \boldsymbol{z})\)
  • \((c \boldsymbol{x} \mid \boldsymbol{y}) = c (\boldsymbol{x} \mid \boldsymbol{y})\)(cはスカラー)

ベクトルのいろいろ

シュヴァルツの不等式

\[\|(\boldsymbol{x} \mid \boldsymbol{y})\| \leq \|\boldsymbol{x}\| \cdot \|\boldsymbol{y}\|\]

三角不等式

\[\|\boldsymbol{x} + \boldsymbol{y} \| \leq \|\boldsymbol{x}\| + \|\boldsymbol{y}\|\]

ベクトルの距離:\(\|\boldsymbol{x} – \boldsymbol{y}\|\)

ベクトルの角度

\[\cos \theta = \frac{(\boldsymbol{x} \mid \boldsymbol{y})}{ \| \boldsymbol{x} \| \cdot \| \boldsymbol{x} \|}\]

ピタゴラスの定理

\[(\boldsymbol{x} \mid \boldsymbol{y}) = 0(直交)\iff \| \boldsymbol{x} + \boldsymbol{y} \|^2 = \| \boldsymbol{x} \|^2 + \| \boldsymbol{y} \|^2 \]

正規直交基底をつくるグラム・シュミットの直交化法

参考 グラムシュミットの直交化法の意味と具体例 | 高校数学の美しい物語高校数学の美しい物語

転置の性質

列と行を入れ替えたもの

参考 転置行列の基本的な4つの性質と証明 | 高校数学の美しい物語高校数学の美しい物語

三角行列

対角と右上の成分のみで、左下の成分が全て0の正方行列:上三角行列

対角と左下の成分のみで、右上の成分が全て0の正方行列:下三角行列

性質

  • 三角行列の固有値は対角成分
  • 行列式は対角成分の積になる

など

参考 上三角行列と下三角行列の性質 | 高校数学の美しい物語高校数学の美しい物語

対称行列

\[A^{\mathrm{T}} = A\]

を満たす正方行列Aが対称行列です。

対称行列は直交行列で対角化できます。

歪対称行列(半対称行列, 交代行列)は

\[A^{\mathrm{T}} = ~- A\]

を満たすものです。

  • 任意の行列\(A\)に対して\(AA^{\mathrm{T}}とA^{\mathrm{T}}A\)はともに対称行列
  • 任意の正方行列\(A\)に対して\(A + A^{\mathrm{T}}\)は対称行列
  • 任意の正方行列\(A\)は対称行列と歪対称行列の和で表すことができる

冪等行列(べき等行列)

\[A^{2} = A\]

を満たす正方行列Aが冪等行列です。

このとき\(A^{\mathrm{T}}やE – A\)も冪等行列になります。

直交行列

\[P P^{\mathrm{T}} = P^{\mathrm{T}} P = E\]

を満たすPが直交行列です。

\[P^{\mathrm{T}} = P^{-1}\]

つまり転置が逆行列になるような行列です。

例えば回転行列は直交行列です。

その他直交行列の性質はこちらを参照

参考 直交行列の5つの定義と性質の証明 | 高校数学の美しい物語高校数学の美しい物語

随伴行列

\[\overline{(A^{\mathrm{T}})} = (\overline{A})^{\mathrm{T}}\]

を\(A\)の随伴行列と言い、\(A^{\ast}\)と書きます。

エルミート行列

\[A = A^{\ast}\]

を満たす行列\(A\)をエルミート行列といいます。

参考 エルミート行列の5つの大切な性質理数アラカルト

ユニタリ行列

\[A A^{\ast} = A^{\ast} A = E\]

を満たす\(A\)をユニタリ行列といいます。

\[ A^{-1} = A^{\ast}\]

ユニタリ行列のうち実行列のもの(実ユニタリ行列)は直交行列と全く同じものです。

参考 ユニタリー行列、エルミート行列などの意味と関係具体例で学ぶ数学

参考 ユニタリ行列とは? ~公式と性質~ (証明付) 理数アラカルト

参考 直交行列とユニタリ行列の定義と性質/その証明を分かりやすく解説!スマナビング!

階段行列と階数(rank)

行基本変形で左側をできるだけ0にしたものが階段行列

「全てが0」ではない行の数が階数(rank)

参考 行列の基本変形とrank,行列式の求め方 | 高校数学の美しい物語高校数学の美しい物語

置換

置換の積\(\tau \sigma\)を計算するとき、\(\sigma\)の方から順に追うことに注意。

参考 【行列式編】置換と巡回置換 | 大学1年生もバッチリ分かる線形代数入門大学1年生もバッチリ分かる線形代数入門

参考 置換と偶置換・奇置換に関する基礎的なこと | 高校数学の美しい物語高校数学の美しい物語

2×2の逆行列

正則な2×2の行列\(A = \begin{pmatrix}
a_{11} & a_{12} \\
a_{21} & a_{22}
\end{pmatrix}\)

の逆行列は(\(a_{11}a_{22} – a_{12}a_{21} \neq 0\)すなわち正則のとき)

\[A^{-1} = \frac{1}{a_{11}a_{22} – a_{12}a_{21}}\begin{pmatrix}
a_{22} & – a_{12} \\
– a_{21} & a_{11}
\end{pmatrix} = \frac{1}{\mathrm{det}A} \begin{pmatrix}
a_{22} & – a_{12} \\
– a_{21} & a_{11}
\end{pmatrix}\]

と計算できます。

参考 逆行列を求める2通りの方法と例題 | 高校数学の美しい物語高校数学の美しい物語

行列式の計算

サラスの公式の覚え方:(左上から右下へ)ー(右上から左下へ)

余因子展開は覚えやすいので省略

参考 余因子と余因子展開 | 大学1年生もバッチリ分かる線形代数入門大学1年生もバッチリ分かる線形代数入門

基本的な変形

  • 行(列)をc倍すると行列式もc倍になる
  • 2つの行(列)を入れ替えると行列式は(-1)倍になる
  • ある行ま(列)のc倍を他の行(列)に加えても行列式は変わらない

性質

  • \(\mathrm{det}(c A) = c^n \mathrm{det} A\)
  • \(\mathrm{det} (A B) = \mathrm{det} A \cdot \mathrm{det} B\)
  • Aが正則なら \(\mathrm{det} A^{-1} = \frac{1}{\mathrm{det} A}\)
  • 転置した行列の行列式も同じ
  • Aの行列式はAの固有値の積に等しい
    (Aが正則でなかったら行列式は0で、固有値に0が含まれる)
  • 直交行列の行列式は\(\pm1\)

その他の性質や証明はこちらのサイトを参照

参考 行列式の基本的な性質と公式理数アラカルト


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