複素数の三角・指数・対数関数まとめ

複素関数としての指数関数の定義

複素数zがどういうものかはわかったけど、じゃあ複素数での指数関数\(e^z\)ってどうなるんだよと考えたときにでてくるのが、実関数でのマクローリン展開です。

\[e^x=\displaystyle \sum_{i=0}^\infty \frac{x^n}{n!}=1+x+\frac{x^2}{2!}+ \cdots +\frac{x^n}{n!}+ \cdots\]

これの\(x\)をそのまま複素数\(z\)にしたら、右辺の\(z^n\)が計算できるから\(e^z\)も定義できるということで、複素関数の指数・対数・三角関数はこの展開の形で定義します。

\[e^z=\displaystyle \sum_{i=0}^\infty \frac{z^n}{n!} =1+z+\frac{z^2}{2!}+ \cdots +\frac{z^n}{n!}+ \cdots\]

急なかんじがしますが、このように定義しておくと例えば項別に微分が考えられるなどでいろいろ都合がいいらしいです。

ここで、\(z=iy\)を定義に入れてみて\(e^{iy}\)を表すと、
(実部と虚部に分けて、実関数のマクローリン展開を用いると)

\begin{eqnarray}
e^{iy} &=& \displaystyle \sum_{i=0}^\infty \frac{(iy)^n}{n!} = 1 + iy~ – \frac{y^2}{2!} -i\frac{y^3}{3!} + \frac{y^4}{4!} + i\frac{y^5}{5!} \\
&=& (1~ – \frac{y^2}{2!} + \frac{y^4}{4!} – \cdots) + i(y~ -\frac{y^3}{3!} + \frac{y^5}{5!} – \cdots) = \cos y + i \sin y
\end{eqnarray}

こうしてオイラーの公式\[e^{i\theta} = \cos \theta + i \sin \theta\]が成り立ちます。

特に\(\theta = \pi\)のときは、オイラーの等式 \(e^{i\pi} + 1 = 0\) が成り立ちます。

また、定義とコーシー積というのを用いると複素数\(z, w\)に対して\(e^{z+w} = e^z e^w\)という性質が証明できるので、

\[e^{x + iy} = e^x (\cos y + i \sin y)\]

が成り立ちます。これは複素解析で計算するときたくさん使いますね。

複素関数としての三角関数

先と同様に

\[\cos z=\displaystyle \sum_{i=0}^\infty (-1)^n \frac{z^{2n}}{(2n)!} =1-\frac{z^2}{2!}+\frac{z^4}{4!}-\frac{z^6}{6!}+\cdots\]

\[\sin z=\displaystyle \sum_{i=0}^\infty (-1)^n \frac{z^{2n+1}}{(2n+1)!} =z-\frac{z^3}{3!}+\frac{z^5}{5!}-\frac{z^7}{7!}+\cdots\]

と定義し、先のオイラーの公式と同様に、

\[e^{iz} = \cos z + i \sin z\]

が確かめられます。

そして、三角関数でよく使うのが次の性質です。
\(\cos(-\theta) = \cos \theta と \sin(-\theta) =~ – \sin \theta\)から

\(e^{i\theta} = \cos \theta + i \sin \theta\)
\(e^{- i\theta} = \cos \theta~ – i \sin \theta\)

この式の両辺を足したり引いたりして、

\( \cos \theta = \displaystyle \frac{e^{i\theta} + e^{-i\theta}}{2}\)

\( \sin \theta = \displaystyle \frac{e^{i\theta} ~-~ e^{-i\theta}}{2i}\)

と表すことができます。

また、これを複素数\(z\)に拡張することで、三角関数は

\( \cos z = \displaystyle \frac{e^{iz} + e^{-iz}}{2}\)

\( \sin z = \displaystyle \frac{e^{iz} ~-~ e^{-iz}}{2i}\)

と定義されます。実数の世界だけではこのようにはなりませんでしたが、複素の世界ではこのように三角関数を指数関数だけで表すことができるようです。

MEMO
ここまで複素関数の指数・三角関数をべき級数展開で定義してきましたが、これらは収束半径が\(\infty\)なので、複素平面上全体で定義されます。安心ですね。

複素関数としての対数関数(多価)

複素数\(z\)に対して、\(\log z\)とはなにかを考えます。

実数のとき、対数関数\(\log\)は指数関数の逆関数だったので、同様に定義します。

\[\log z = w \iff z = e^w\]

この定義にそって\(\log z\)を求めてみましょう。実数\(x, y\)を用いて\(\log z = w = x + iy\)とおくと、先の定義とオイラーの公式から

\[z = e^w = e^x (\cos y + i \sin y)\]

となるので、複素数\(z\) を \(z = r e^{i\theta} = r (\cos \theta + i \sin \theta)\)と表しなおすと、

\[ \begin{cases} e^x = r \\ y = \theta + 2n \pi (n \in \mathbb{ Z })\end{cases} \]

つまり\[ \begin{cases} x = \log r \\ y = \theta + 2n \pi (n \in \mathbb{ Z })\end{cases} \]

となり、\(z = r e^{i\theta} = r (\cos \theta + i \sin \theta)\)に対して、

\[ \log z = \log r + i (\theta + 2n \pi) (nは整数)\]

となることがわかります。いいかえると、

\[ \log z = \log |z| + i (\arg z + 2n \pi) (nは整数)\]

です。ポイントは、\(2n \pi\)の部分で、これがあることで、\(\log\)の値は無限にでてきてしまいます。これが多価関数と呼ばれる理由です。

\(z = re^{i\theta}\)の\(e^{i\theta}\)の部分は、任意の整数\(n\)に対して\(e^{i(\theta + 2n\pi)}\)と表せて、無限にでてきてしまうからですね。\(z = e^{\log z}\)となる\(\log\)を求めたのでこれで正しいことになります。

これに対して、一意に定まるLogというのもあります。

一意に定まらない対数関数logに対して、虚部を\((-\pi, \pi] \)に限定すると一意に定まるので、これを対数関数の「主値」とよんでLog zで表します。

(Logを数式として出力できなかったのですが、logの最初のエルを大文字(L)にしただけのものです。)

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